研究成果

環境と人間の安全保障領域

研究:シンポジウム

エイズ問題が語る中国の真実
〜過ちを繰り返さないために共に語ろう〜

2008.11.16

序文

日本を含むさまざまな国が経験してきたことであるが、エイズに関わる訴訟は、膨大なコストと時間を伴い、感染者にとっても国や社会にとっても、非常に大きな負担を強いる。中国では血液管理の不備によって1990年代にHIV(エイズウィルス)に感染した者たちによる訴訟が近年増えているが、法律や制度が十分に整備されておらず、社会不安を煽る結果となるケースも出て来ている。

現在中国には、多数の法律援助を行う市民団体や政府系組織が活動しているが、情報や専門知識が不足しており、特に人材を育成する上で支障を来たしている。日本と中国は同じアジアの国であり、文化や社会に共通する特徴も有している。これから制度や法律を整えようとする中国にとって、日本の事例は参考に値するものであろう。日中関係、ひいては国際社会の発展を模索するためにも、日本が中国の法整備・制度建設や人材育成に貢献するというのは、非常に有意義なことである。

本シンポジウムでは、このような認識の下、血液管理及びエイズに関連する法整備や制度建設に関する経験交流及び比較研究を進めていくこと、民間団体やメディア関係者などの活動を支援していくことなどについて、積極的な議論を展開した。



開催概要

[日時]2008年11月16日(日)
[場所]早稲田大学 小野梓記念講堂
[参加形式]無料、事前登録なし
[使用言語]中国語・日本語・英語(同時通訳*英語は午前中のみ)
[主催] 私立大学学術研究高度化推進事業(オープン:2004−2008)
「エイズ問題が語る中国の真実」シンポジウム実行委員会
(学習院女子大学阿古智子研究室、中国性病エイズ予防協会政策法律工作委員会、惟謙エイズ法律センター、楊紹剛弁護士事務所)
[共催]AHC研究所、早稲田大学グローバルCOEアジア統合プログラム
[助成]国際交流基金、東京HIV訴訟弁護団基金

論文集

「エイズ問題が語る中国の真実(2008/11/16)」論文集 [1531KB] PDF File

目次

血液汚染がエイズ感染を招く 権利侵害の賠償責任・国家責任、集団事件 第三者による調停の斡旋、および司法裁判 李楯(中国性病エイズ予防協会政策法律工作委員会主任) p3

輸血、血友病によるエイズ感染に対する法的アプローチ
楊紹剛(上海紹剛法律事務所・弁護士) p4〜p13

希望無き道
阚 志明(湖南友愛之家HIV/AIDS 関懐小組代表) p14〜p18

同性への性的関係とエイズ予防・治療
周丹 (上海紹剛法律事務所・弁護士) p19〜p34

エイズ問題 から捉える中国の政治社会変動
阿古智子(学習院女子大学准教授) p35〜p50

河南民間エイズ運動回顧
李丹(惟謙エイズ法律センター) p51〜p58

HIV 感染者及び感染者草の根組織の政策的支援へのニーズ
孟林(愛の舟感染者情報支援組織) p59〜p65

小莉事件から見たエイズの影響下にある人々に関する法律と社会的窮地
靳薇(中央党校教授) p66〜p83

エイズ感染者による自己救済のための積極的努力
中国河北省邢台地区エイズ感染者グループによる自助運動の調査と研究
王克勤(中国経済時報社 主席記者(北京)) p84〜p92

JICA 技術協力プロジェクト専門家が垣間見た中国地方衛生行政
福原毅文(国際医療福祉大学教授) p94〜p96

日本の薬害エイズ被害者の当時と現状
大平勝美(はばたき福祉事業団理事長) p97〜p100

エイズと行政・社会支援(日本)
沢崎 康((財)エイズ予防財団国際協力部課長) p101〜p104

長野県佐久地域におけるHIV/AIDS 発生動向と対策
高山義浩(佐久総合病院総合診療科) p105〜p107

桜屋 伝衛門(ライター) p108

郭 晃彰(早稲田大学公認イベント企画サークルQoon 幹事長) p109〜p110

日本におけるHIV訴訟と原告弁護団の活動
安原幸彦(東京HIV訴訟原告弁護団員)
杉山真一(東京HIV訴訟原告弁護団員・前ニューヨーク大学客員研究員) p111〜p112

血液製剤による血友病患者のHIV感染―国際比較の視点から
杉山真一(東京HIV 訴訟原告弁護団員・前ニューヨーク大学客員研究員) p113〜p117

AIDS Blood Scandals: What China Can Learn From the World’ Mistakes
Sara Leila Margaret Davis p118〜p153

存在と尊厳――薜某事件から見る現代中国の同性愛に関する法律の変遷
賈平 p154〜p165


議事録

「エイズ問題が語る中国の真実(2008/11/16)」議事録 [391KB] PDF File

プログラム

開会の辞 天児 慧(早稲田大学教授)

趣旨説明 阿古 智子(学習院女子大学准教授)

基調講演 スコット・バリス(テンプル大学教授)
「アメリカの経験からエイズ問題を語る」

基調講演 川田龍平(参議院議員)
「日本の薬害エイズ」

第1セッション「エイズと法律」
司 会 李 楯(中国性病エイズ予防協会政策法律工作委員会主任)
パネリスト 楊紹剛(楊紹剛弁護士事務所主任、上海市人民政府参事)
阚 志明(湖南友愛之家HIV/AIDS 関懐小組代表)
サラ・デイビス(Asia Catalyst エグゼクティブディレクター)
周 丹(楊紹剛弁護士事務所弁護士)
大平 勝美(はばたき福祉事業団理事長)
安原 幸彦(東京HIV訴訟原告弁護団)
杉山 真一(東京HIV訴訟原告弁護団)

昼食

基調講演 家西悟(参議院議員)「日本の感染症・予防医療法」

第2セッション「エイズと行政・社会支援(中国)」
司 会 阿古 智子(学習院女子大学准教授)
パネリスト 李 丹(惟謙エイズ法律センター代表)
孟 林(愛の箱舟感染者情報支援組織)
靳 薇(中央党校教授)
王 克勤(『中国経済時報』首席記者)
福原 毅文(国際医療福祉大学教授)

休憩

第3セッション「エイズと行政・社会支援(日本)」
司 会 柿沼 章子(はばたき福祉事業団)
パネリスト 沢崎 康(エイズ予防財団国際協力部課長)
高山 義浩(佐久総合病院総合診療科医師)
長谷川 博史(ジャンププラス代表)
生島 嗣(ぷれいす東京専任相談員)
桜屋 伝衛門(ライター)
郭 晃彰(早稲田大学公認イベント企画サークルQoon 幹事長)

総合討論「過ちを繰り返さないために」
司 会 杉山 真一 パネリスト 出席者全員

閉会の辞 李楯(中国性病エイズ予防協会政策法律工作委員会主任)


前のページへ戻る