研究成果

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研究:セミナー・ワークショップ

社会領域研究会・鴨川明子著『マレーシア青年期女性の進路形成』合評会

2010.01.25

概要

報告者: 鴨川明子(大学院アジア太平洋研究科助教・GIARIシニアフェロー)
日時: 2010年1月25日20−22時
場所: 早稲田大学19号館713会議室

*本著作は、日本比較教育学会第19回平塚賞受賞作品です。


鴨川明子著『マレーシア青年期女性の進路形成』


レジュメ・Summary

  • 研究会: 社会領域研究会 鴨川明子『マレーシア青年期女性の進路形成』(東信堂、2008年)合評会
  • 司会: 黒田一雄(早稲田大学アジア太平洋研究科教授)
  • 報告者: 鴨川明子(早稲田大学アジア太平洋研究科助教)
  • 日時: 2010年1月25日(月)20:00〜22:00
  • 場所: 早稲田大学19号館 713教室
  • 参加者: 梅森直之(早稲田大学政治学研究科)、阿古智子(早稲田大学国際教養学部)平川幸子(GIARI助教)、など十数名。

報告概要

筆者は、研究の動機、関連する先行研究、フィールド調査の概要とともに、出版後の反応とそれについて報告者自身が考察した点について紹介した(別紙レジュメ参照)。

参加者から挙がった主な質問やコメントは以下の通りである。

  1. 「疑似的アジア」としてのマレーシアを一般化できるか?―女性内部の多様性
    ―マレー人女性、華人女性内部の多様性はどのように説明できるか。また、マレーシアやインドネシアのようにある程度自ら選択できるイスラーム女性に比して、戒律の厳しいイスラーム女性の状況はどうか(阿古先生)、マレーシアの華人は、アジアの他の華人の代表として一般化できるか(平川先生)、マレーシアは「疑似的アジア」を体現していると言えるが、インド人も含めることができればよりよいのではないか(黒田先生)、カンボジアでは女性の二極化が見られる。たとえば、高い階層の女性は地位維持機能を有しているが、マレーシアはどうか(島崎さん)。
  2. マクロ次元とミクロ次元をつなぐメゾ次元、そこに見られる「アジア性」の探究
    ―女性自身の選択と、マレーシア政府の政策、家庭での教育などとの因果関係はどうか(勝間田先生)、高等教育を受けることが必ずしも幸せでない場合もあるのでは、本人が満足できるかどうかが重要ではないか(河路さん)、マクロ次元とミクロ次元をつなぐメゾ次元にこそ、アジア性が見られるのでは(平川先生)。
  3. 日本との比較可能性―女子教育、女性運動、主婦と家事労働の歴史をめぐって
    ―日本の女性運動との比較の観点から、マレーシアの女性運動はどうであったか。もしあまり活発でなかったとしたら、マレーシア社会の特殊性と言えるか。もしマレーシアにも女性運動が存在したとすれば、どの階層によるものか(梅森先生)、日本の女子教育、特に男女共学の歴史との類似性は見られるか(黒田先生)、主婦と家事労働との関係は重要であるが、マレーシアの状況はどうか(梅森先生)、欧米先進国型の「ジェンダー平等」とひとくくりにすることへは慎重になるべきではないか(李先生、磯野さん)。
  4. マレーシアにおけるフィールドワークの難しさ、調査方法の厳密さ
    ―マレーシアは非常に調査しにくい国に思われる。どのようにアポイントをとりフィールドワークを行ったか(島崎さん)、量的研究と質的研究、実証研究というタームの使い方および方法への疑問、より丁寧に説明するべきではないか(磯野さん)
  5. 地域研究者として生きること、教育学者として生きることへの迷い
    ―最も活発に議論された点である。たとえば、ディシプリンは道場みたいなもの(梅森先生)、二者択一に考えるのではなく、フレキシブルに考えるべきでは、あるいは疑問そのものが問題なのでは(勝間田先生)という意見などが挙がった。
  6. 社会領域班としてのアウトプット
    ―各自のフィールドの経験を教科書としてまとめるのは有用ではないか(梅森先生)、という提案が挙がり、次回の研究会へと議論は続くこととなった。

(文責:鴨川明子)



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