GIARI全体
研究:出版物:Asian Regional Integration Review (ARIR)
「Asian Regional Integration Review Vol. 2 」刊行しました。
2010.03.26
編集長より

GIARIにより世界各国から選抜された優秀な博士課程の院生は、“サマー・インスティテュート”期間の、研究者たちとの活発な議論を経て、このジャーナルのために修正した論文を提出。論文はアジア太平洋研究科を中心とした教授陣によって、本拠点の研究テーマとの関連性、適時性, 専門性そして独創性の観点から審査され、その結果6点の論文が選ばれ、編者の指導のもとさらなる修正を重ねた末に、本号に収録された。
本号に掲載されている論文は全て、アジアにおける地域統合に関連した今日的な論点を扱っている。
サプコタの論文は、統計的分析により、アジアの先進国と発展途上国間の貧困格差の削減における地域統合のインパクトが実証されている。結果として、地域統合は、地域内において自由なグローバリゼーションの利益が広がる方法のひとつであることが立証されている。
パジョンの論文では、インドと日本の政治的、経済的連携を促進するために行われている進行中の取組みの背景にある動機と東アジア地域統合へのインプリケーションを検証している。筆者は、二国間における協力の明るい兆しを、一部中国の台頭の結果として見ているが、限界があるとも指摘している。
オングは質的分析を行い、次のような命題に取り組んでいる。1997-98年に起きたアジア金融危機と同様に現在のグローバルかつ地域的な経済金融危機は東アジアにおける地域統合の機運を高めるという命題である。必ずしもそうではないという結果が導きだされている。
ウィルトは、安全保障分野における中国と日本の二国間協力の構造と規模を、伝統的安全保障と非伝統的安全保障との間の比較から検討している。その目的は、非伝統的安全保障の課題は伝統的安全保障の課題より二国間協力を促すという仮説を明らかにすることである。筆者は、仮説を明確に立証はできないものの、その妥当性はなお残るとしている。
カヌーツァンは、ニューヨークタイムズのアジアに関連したトピックの報道を分析し、アジアにおいて高まりつつある地域統合の潮流に対する米国のメディアの注目は低いという印象を実証している。また、米国の 実質的参加ぬきの地域統合へのインプリケーションを提示している。
ビーマーは、伝統工芸が国境を越えたコミュニティ間における文化的価値のつながりをもたらす可能性を探るために、日本の民芸品についてのケーススタディを行っている。
掲載された論文は全て、模索的であり、それぞれ提示された研究設問に対して決定的な結論は出されていない。しかしながら、各分野における先達の研究者の理論的実証的研究を応用した有望な試みがなされている。また、今後さらなる研究を必要とする重要なアプローチと課題も提示されている。
上久保氏、キム氏による書評では、競合する地域主義(Competitive Regionalism)とFTAに関する最近の分析が紹介され、アジア地域統合研究に関する先行研究について時宜を得た評価がなされている。
目次
編集長より
赤羽恒雄論文(*)
グローバリゼーションのアジアにおける生活の質(QOL)の収束に与える影響−グローバリゼーションのKOF指標による実証−Globalization's Convergence Effect on Human Quality of Life (QOL) in Asia: Evidence from the KOF Index of Globalization
ジート・サプコタ
日印連携の東アジア地域主義への意義−
Significance of the Japan-India Partnership for East Asian Regionalism
セリーヌ・パジョン
東アジア地域統合は見込めるか―世界金融危機の地域主義に対する意味−
Banking on East Asian Integration? Implications of Global Financial Crisis for Regionalism
バーナード・オング
日中関係における伝統的安全保障と非伝統的安全保障協力の関係−環境安全保障と北東アジア地域の構築−
The Nexus between Traditional and Non-Traditional Security Cooperation in Japan-China Relations: Environmental Security and the Construction of a Northeast Asian Region
クリスチャン・ウィルト
米国エリート新聞に見られるアジア地域統合に対する低い認知度―合理的無知の悪循環か―
Asian Integration's Low Visibility in the United States Elite Press: The Vicious Cycle of Rational Ignorance?
トロイ・カヌーツァン
日本の「伝統」産業復活−アジア地域統合への展望と方策−
Reviving Japanese "Traditional" Industries: Prospects and Strategies for Asian Regional Integration
ジェニファー・ビーマー
書評
ミレア・ソリス、バーバラ・スターリングス、片田 N. さおり『競合する地域主義:太平洋地域におけるFTAの拡大』NY: パルグレーブ マクミラン、2009Mireya Solis, Barbara Stallings, and Saori N. Katada, eds., Competitive Regionalism: FTA Diffusion in the Pacific Rim, New York: Palgrave Macmillan, 2009.
上久保誠人
ビノッド・K. アガワール、浦田秀次郎『アジア太平洋地域における二国間貿易協定: 起源、展開、影響』NY: ルートリッジ、2006年
Vinod K. Aggarwal and Shujiro Urata, eds., Bilateral Trade Arrangements in the Asia-Pacific: Origins, Evolution, and Implications, New York: Routledge, 2006.
キム・ゼンマ
(*邦題は仮訳です。)
編集スタッフ
編集長
赤羽恒雄
モントレー国際大学国際政策管理学大学院教授、同東アジア研究センター所長
「アジア地域統合のための世界的人材育成拠点」(GIARI) シニア・フェロー
編集委員
平川幸子
早稲田大学アジア太平洋研究センター次席研究員
「アジア地域統合のための世界的人材育成拠点」(GIARI) 助教
編集アシスタント
赤羽光子
モントレー国際大学大学院生
赤羽恒雄
モントレー国際大学国際政策管理学大学院教授、同東アジア研究センター所長
「アジア地域統合のための世界的人材育成拠点」(GIARI) シニア・フェロー
編集委員
平川幸子
早稲田大学アジア太平洋研究センター次席研究員
「アジア地域統合のための世界的人材育成拠点」(GIARI) 助教
編集アシスタント
赤羽光子
モントレー国際大学大学院生