人材育成成果

経済統合とサステイナビリティ

人材育成:支援スキーム:調査研究支援スキーム(学生)

劉 曙麗 / 調査地域: 中国(北京市、上海市)

2009.09.15

所属 アジア太平洋研究科
学年 博士課程2年
氏名  劉 曙麗
日程 2009年9月15日〜2009年9月25日

調査地域

中国・北京市、上海市

リサーチ目的

今回の調査研究活動は、主に博士論文の一部に必要な統計データの収集・購入を行い、現地調査および情報収集することを中心とする。具体的には、
  1. 北京で、中国商務部と中国統計局に訪問し、それぞれの公表された対中直接投資のデータの相違について事情聴収、意見交換を行い、必要な統計データを購入した。
  2. 中国国務院発展中心、野村総研・清華大学研究所などなど研究機関を訪問し、文献調査や研究方法のフロンティア(経済地理計量分析)について、関係者に対するインタビュー(意見交換)を行う。
  3. 外資(特に日系)企業が多く進出している長江デルタ(上海、江蘇、浙江)で、現地調査を行い、外資企業のこの地域での集中立地の要因を探し、必要な統計データを収集する。


研究課題

アジア諸国の経済関係を見るために、直接投資と貿易の研究が不可欠である。特にアジア地域においては、直接投資を行う担い手として日本企業が大きな役割を果たしているのに対し、受け手としては、発展途上国(中国、タイなど諸国)が比較的大きな位置を占めている。

日本企業のアジアへの進出立地は、国別にみると、中国(4,878件)は最大の受入れ国であり、その次は、タイ(1,577件)、シンガポール(991件)、台湾(896件)、マレーシア(759件)である。その一方、同じくアジアにあるその他の国(例えば、ブルネイ、ネパール)に進出した日本企業は数件しかない。さらに興味深いのは、中国の国内においても、同じ傾向が見られることである。日本企業は、上海(1,709件)、江蘇省(740件)に集中立地している一方、その他の地域にあまり直接投資を行ってない。 このした日本企業の進出、特に、立地拠点の決定は、どのような要因を考慮して決定されているのであろうか。

今回の現地調査を行った上海を例として、中国に進出する日本企業の立地決定要因について、有効な情報、ヒントを探し、一本の論文を仕上げたいと思っている。そして研究範囲を広げ、日中韓を中心としてASEAN諸国なども視野に入れて分析を行うことを考えている。



成果

本調査研究においては、中国商務部と中国統計局を訪問し、外資企業のデータおよび統計年鑑の作成、出版時期について調査した。国務院発展研究機関、野村総研・清華大学研究所などを訪問し、文献調査や研究方法のフロンティア(空間経済計量分析)について、関係者に対するインタビュー(意見交換)を行った。また外資(特に日系)企業が集中している上海・江蘇省の経済開発区を視察し、現地での情報収集、企業関係者に対するヒアリングなどを行った。本研究調査を通じて、得られた成果は以下のようにまとめられる。

  1. 研究方法のフロンティア(経済地理計量分析)である地理情報システムについての使い方及びモデル構築などについての参考書を購入した。地理情報システム(GIS=Geographic Information System)とは、電子地図の上に、人口や企業所在地などの位置に関係した様々な経済データを重ね合わせて表示し、検索や分析を行うシステムである。本来地理学で使用された分析手法で、経済データとの統合により、産業の発達や衰退が地域に与える影響を明らかにしようとする経済学へ応用し始めた。私の論文においては、立地論での重要な視点である空間自己相関の経済分析などへの応用に期待されている。これからじっくり習得していきたいと思っている。この新しい分析アプローチの把握により、アジア地域間の経済関係での空間関連性の研究にも分析方法の可能性が拡がるであろう。
  2. 1中国統計局と商務部を訪問し、それぞれの公表された対中直接投資のデータの相違について意見交換を行った。また中国統計局で出版している各統計年鑑、資料の特徴、内容、及び収録期間などについて説明してくれた。さらに日本から最新の統計出版物についての問い合わせ先や購入ルートを確認した。博士論文の分析にも不可欠な統計資料「新中国五十五年统计资料汇编」など必要な統計資料を入手した。特に「新中国五十五年统计资料汇编」は1949~2004年約55年に渡る長期統計を地域別に収録し、長期統計、地域統計双方の観点から分析可能になる貴重な資料である。(ただし、電子データがついてない。)
  3. 中国国務院発展研究センター企業研究所に訪問し、企業について最近中国での研究課題及び日本企業について関心があるテーマなどについて、意見交換をした。また野村総研・清華大学共同研究所に訪問した際、日本企業の中国進出のアドバイザーを務めた実務的な専門家から様々な立地決定要因について伺うが出来た。以上の機関・研究所の訪問により、有益なアドバイスを頂き、今後の研究に欠かせない資料・参考文献を入手した。
  4. 外資(特に日系)企業が集中している上海・江蘇省の経済開発区を視察し、現地での情報収集、企業関係者に対するヒアリングなどを行うことにより、重要な情報が得られた。工場、住宅、娯楽施設などが整備されている現地の風景は、イメージしていた生産工場だけの開発区と違って、生活インフラが都市化している。産業集積から都市化している経済発展を、自分の目で確かめることは貴重な経験となった。


事業推進担当者


報告書


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