人材育成成果

経済統合とサステイナビリティ

人材育成:支援スキーム:調査研究支援スキーム(学生)

金 仁仙 / 調査地域: 韓国

2009.12.22

所属: アジア太平洋研究科
学年: 博士後期課程1年
氏名: 金 仁仙
日程: 2009年12月22日〜2010年1月5日

渡航地(国・都市名)

韓国 ソウル

リサーチ目的

  • 関連資料の収集
  • 韓国企業問題(企業の社会的責任について、韓国経済史、特に財閥企業関連し)についてハングルで書かれた書籍から必要な情報を収集。 その中から本研究と関連し必要なところをコピー、または購入し、豊かな関連資料を確保する。
  • 国会図書館に所在し、海外では見られなかったいくつかの論文を閲覧する。


研究課題

本研究は多国籍企業の海外市場における社会的責任活動の展開とそれによる経営成果について分析し、企業の長期的な成長と企業のあり方について考察することで、究極的には、アジア地域経済の成長と繁栄を実現する担い手である多国籍企業の役割を追及し、アジア地域経済統合に導く研究に貢献することである。

国際化の進展に伴い、企業の海外市場における活躍が国内経済に与える影響力は急増してきた。アジア地域においては、中国といった新興途上国の市場開放と経済の急成長の中、世界産業拠点のアジア移転、アジア地域間のモジュール化の進展、さらに、アメリカを中心に広がった地域主義は1997年アジア通貨危機以降アジア地域間の経済的協力の重要性をより強めてきた。そのため、アジア地域においては日本を中心にアジア地域共同体作りを目指し周辺国との緊密な関係作りに国をあげ挑んでいると見られる。

特に日本は国を挙げた温室ガスを減らし、地球環境を顧慮した発展のため、周辺国の気候協約への参入を呼びかけている。そして、それと一脈相通に国を代表するともいえる産業である自動車業界は環境にやさしい車の開発と政策にはかどり、国の政策と経済を担う企業という実物がアジア地域共同体をリードする指揮者としての役割を果たそうとしている。

政府の役割が縮小し、多国籍企業の影響力が増加している現在において、多国籍企業の環境問題への積極的な取り組みは、国際社会における企業の社会的責任に応じるとともに、結局国際市場において企業名声、もしくは企業イメージを改善させ、企業には良い経営成果をもたらすことができる。したがって、こういった新たな開発方向は、以前日本がアメリカで起きた反日運動が起きた際、海外市場における日本企業に対するイメージ改善のため悩んだフィランソロピー、また企業倫理論などの主張が、国際競争が激しくなった現在においては企業側によって長期的な企業戦略の一環で企業の社会的責任について工夫するいわば「戦略的企業の社会的責任(CSR)」が議論されている。

一方、韓国においては、国内市場をほぼ独占している財閥企業が存在する。いまやアジア諸国で市場を拡大している韓国の財閥は、品質の面においては先進企業との差をほとんど無くしたにもかかわらず、海外市場においては依然として「利益創出の難しい産業構造」、または「薄利多売の産業構造」と呼ばれている。そして、その原因の一つとして、企業の低い企業イメージとブランド力が指摘される。そのため、戦略的CSRによる企業イメージ改善、ブランド力の向上は、韓国企業の範囲栄と国内経済の持続のためにももっとも重要な課題として認識される。

韓国におけるCSRについて考察するためには、まず、国内経済に絶対的な影響力を持つ財閥企業のCSR導入と展開について理解する必要がある。

従って、今回の韓国への研究出張は、本研究を進める第一歩として、韓国経済成長の過程で形成した財閥企業と、彼らの社会的責任活動に関連する資料を収集することを主な目的とした。



成果

韓国の経済成長に関する資料からは、戦後の韓国経済とともに成長してきた財閥が、当時非民主主義と批判された軍事政権下で政府の経済政策に応じながら成長し、「不正蓄財者」として烙印されてきたことを確認することができた。これは、依然韓国国内の財閥企業に対する反感と不新の根になっていると考えることができる。また、海外市場において企業の成長を妨げる低い企業イメージとブランド力とも関連して、戦略的CSR活動によって解決すべき課題であると見られる。

韓国経済史の資料から財閥の形成と成長について理解することができ、韓国財閥企業の成長の背景と、財閥企業によるCSR導入、またその展開となる背景について理解することができた。

一方、韓国企業の社会的責任については、「サムソン」と「現代」といった主な財閥企業に関する先行研究を少なくとも収集することができ、これからの本研究を進めるに重要な参考になると思う。



事業推進担当者確認


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