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組織

本学は、建学の理念に基づき本年の創立125周年に向けて「早稲田大学第二世紀宣言」を標榜し、「21世紀の教育研究グランドデザイン」を大きな柱とし、地球規模問題解決への貢献、アジア地域における国際拠点形成などの戦略展開を図ってきた。特に「アジア太平洋における知の共創」は、早稲田大学の歴史と現実と未来を見据えた核心的なスローガンとなっている。

こうした基本的な戦略の下に、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科は、本学で最初の独立研究科として1998年に創設された。以来、年2回のAOによる学生選抜、日本語・英語併用による講義、官公庁や民間企業、国際機関などからの専任・兼任教員の招聘、履修学生を対象にした教育指導内容評価の実施など、日本の大学院教育では先駆的な試みを続けてきた。 同研究科はこれまで2専攻体制で運営してきたが、国際経営学専攻の商学研究科との合併により、2007年4月から国際関係学専攻のみで運営されている。同専攻の教員は、研究系統と実務系統の双方から採用されてきており、研究対象地域やディシプリンも多様性に富む。特に、本拠点の事業推進担当者は海外とのプロジェクトを多く実施してきており、彼らのもとで学んでいる学生は、日本人以上に海外からの留学生が多い。中国を筆頭に、韓国、ヴェトナム、タイ、マレーシア、シンガポール、インドネシア、フィリピンなど、東アジア共同体を構成する国・地域ばかりか、東アジアの国際関係に関心のある学生がアメリカやオーストラリア、インドなどからやってきている。

事実、同研究科の最大の特徴は、海外からの留学生、とりわけ日本を含む、各国政府の奨学金を獲得して研究に従事している学生が多いことである(2007年1月20日現在、博士後期課程では外国人留学生が102名おり、うち21名は国費留学生)。北京大学国際関係学院とは博士号取得をめぐるダブルディグリー制を実施しており、毎年5名から7名の学生を受け入れ、すでに4名の博士号取得者を輩出しているが、こうした研究教育上の実績抜きに、本拠点の研究教育プログラムは考えられない。

とりわけここ数年の重要な試みとして、文部科学省支援の「魅力ある大学院教育」イニシアティブに採択された「海外連携型プロジェクトの有機的展開」がある。その一環として、2006年8月にCreating Cooperation and Integration in Asiaと題するセミナーを開き、早稲田大学以外に、北京大学(中国)や清華大学(中国)、ソウル大学(韓国)、高麗大学(韓国)、国立モンゴル大学、オーストラリア国立大学、国立シンガポール大学、チュラロンコーン大学(タイ)、デ・ラ・サール大学(フィリピン)などから優秀な学生を集め、博士後期課程学生をTAとしながら座学とリサーチ・トリップを行った。ソウル大学国際大学院の殷棋洙助教授によると、このセミナーへの参加意思を表明した学生が多すぎて、選抜をするのが大変だったという。本拠点形成の「テストラン」ともいえる同セミナーに参加したアジアからの研究者は、「こうした試みとしては最初のもので、大変重要な第一歩だ」と言われ、本拠点の世界規模でのユニークさと重要性を確信した。

あるいは同イニシアティブと21世紀COEプログラムの共催によって行った博士後期課程ワークショップ(2006年3月26日と2007年1月27日に開催)に、北京大学や南開大学、高麗大学など8つの大学から第一線の研究者を招聘し、学生の報告に貴重なコメントを提供してくれた。そこでは、”I think this workshop is an excellent step forward or great platform for continuing developing the graduate program in this school.”(オーストラリア国立大学ピーター・ドライスデール教授)といった発言が多く聞かれ、本拠点のきわめて高い潜在力が繰り返し指摘された。

アジア太平洋研究科に近いコンセプトで作られている大学院としては、ソウル大学国際大学院、高麗大学国際大学院と北京大学国際関係学院がある。これらの大学院と本研究科が主催するサマースクールへの参加などを通じて交流を深めているが、本研究科に集まる学生の質と教育レベルの高さはこれらの大学院からも認められている。また、ジョージワシントン大学のエリオットスクールとの交流も盛んだが、同スクールからも本研究科は高く評価され、同校からの交換留学生も絶えることがない。

上記の「海外連携型プロジェクトの有機的展開」が採択され、同プロジェクトの一環として行った各種活動は多方面から高く評価され、2006年11月に実施された文科省の大学教育改革プログラム合同フォーラムで、人社系の代表として成果報告を行っている。

豊富なアジア研究者を集めた早大の各教育研究機関

アジア太平洋研究科ともっとも緊密な関係を有している組織は、全学を包括するアジア研究機構である。2007年3月まで早大内で実施されていた21世紀COEの2つのアジア関連プロジェクト(『現代アジア学の創生』、『アジア・地域文化エンハンシング研究センター』)を母体としながら、全学のアジア研究者の結集、協力関係の構築を目指し2006年に奥島孝康前総長を機構長として正式に発足した。また長い歴史と伝統を持つ政治経済学術院の政治学研究科経済学研究科、社会科学総合学術院の社会科学研究科とわが研究科とも、21世紀COEプロジェクトを通して緊密な協力関係にあり、各2名の教授が事業推進担当者に加わっている。そのほか法学学術院、教育総合学術院、文学学術院、商学学術院、理工学術院などにも社会科学・人文科学・自然科学の分野においてアジアを対象とする教育研究者が多数存在しており、可能な限りこうした人々の協力を仰ぎながら、本プログラムを推進していく。