研究プロジェクト

GIARI新領域編成
新領域編成:「GIARIモデル図」

「政治統合とアイデンティティ」グループ:

アジアの政治統合・協力のメカニズム研究「アジアの平和構成要因に関する研究」

植木(川勝) 千可子
「地域安全保障協力の検討」

東アジア地域には、朝鮮半島や台湾海峡など、紛争の種が存在する。また、日中、米中が将来、競争を激化させるのではないか、という懸念もある。しかし、東アジアには地域的な安全保障協力のメカニズムが整っていない。このプロジェクトでは、各国の安全保障政策を分析した上で、地域安全保障協力の可能性やその在り方を探る。

天児 慧
「内政・外交と地域秩序」

グローバリゼーションおよび各国間の関わり、国際関係の緊密化は、国内外の経済社会を流動化し、階層構造、生活様式を大きく変えるとともに、格差・環境汚染等の問題を深刻化させている。また各国の政治体制変容や外交のあり方にも大きな影響を及ぼしている。このような状況の下で、アジア太平洋地域の安定を図り、秩序を維持していくための枠組みはどのように構想されるべきか。

篠原 初枝
「国際システムにおけるアジア地域」

アジア地域が、アジアとしての自立的ダイナミズムを有するとしても、それは外部世界あるいは全体システムの動きとは無縁ではないであろう。たとえば、19世紀国際システム(帝国主義)におけるアジアと、21世紀国際システム(グローバル・トランスナショナル体制あるいは「アメリカ帝国」)におけるアジアでは、その意味合いや位置づけは異なるともいえる。アジア地域(統合)が国際システム(国際社会)といかなるかかわり・関連性を有するか、このプロジェクトでは考察する。

青山 瑠妙
「アジアのパブリック・ディプロマシー」

経済、交通などさまざまな機能的な統合・協力が進み、政府主導のもとでアジア一体化は確実に進行している。こうした一体化の中で、アジア各国は自国のソフトパワーを発揮するため競っている。本プロジェクトは各国のソフトパワー発揮の手段となるパブリック・ディプロマシーを検証し、文化やアイデンティティも含めたアジア一体化の実態を考察する。

寺田 貴
「東アジア地域主義の実証・理論分析」

通貨危機以降、東アジアではASEAN+3や東アジアサミットなど、地域主義の制度化が、地域化及び地域統合の進展と共に進んでいる。本プロジェクトでは、これらの動きを「パワー」、「利益」、「規範とアイデンティティ」という3つの理論枠組みを通して、「何が」、「どのように」、「なぜ」起こっているのかを分析し、実証・政策的考察に厚みを持たせたい。

「経済統合とサステイナビリティ」グループ

地域統合のメカニズムに関する理論構築と実証研究

深川 由起子
「東アジアの経済統合と非伝統的貿易関心事項地域秩序」

貿易と投資のリンクが濃密な東アジアで、いわゆる非伝統的貿易関心事項が関税引き下げ以外の側面でどの程度の実質的統合推進効果があるのか、逆に阻害要因となっている面がないか、検討し、実態先行型経済統合のパッケージに組み入れられるべき事項を具体的に明らかにする。

浦田 秀次郎
「アジアにおける経済統合の実態と課題」

貿易・投資を中心に経済統合の進展状況を計測し、依然として残る障害要因を分析する。またFTAが多数、締結されてきていることから、それぞれの貿易創造効果を非加盟国への貿易転換効果を含め計測する。さらにEAFTA,CEPEA,FTAAP など広域構想を比較検討する。

トラン・ヴァン・トウ
「東アジア地域統合と後発国――中国のインパクトを考察する」

ASEANの後発国とってのFTAの影響、とりわけ中国とのFTAをめぐる、必ずしも肯定的とは言えない影響が出始めていることを分析し、経済発展の持続に向けた課題を日本や周辺ASEANとの協力を含めて明らかにする。

白木 三秀
「東アジアの労働市場」

東アジア内における海外派遣者の統計的整理・分析を日本以外に韓国、台湾、中国などからの移動について実施し、バイからマルチに変貌しつつある域内の人的移動の変化潮流を検証する。成果は国際シンポジウムに反映し、引き続き、域内のHRM研究者ネットーワーク形成を図る。

横田 一彦
「東アジアの部品貿易増大と相互依存関係の進展」

東アジア経済の特徴である活発な資本財、部品貿易の実態を精査・分析し、fragmentation,out-sourcing, 垂直特化といった、従来の国際貿易理論では必ずしもカバーできない部分を明らかにし、新たな理論構築に向けた実証を展開する。併せて経済統合への示唆についても考察する。

松岡 俊二
「アジアの環境ガバナンス」

アジアにおける環境ガバナンスの形成と地域統合の関連性を、グローバル環境ガバナンスの形成との関係も含めて分析し、アジア環境共同体の形成を展望する。具体的には地球環境問題(気候変動)、ブラウン系の越境型大気汚染や海洋汚染、グリーン系の森林保全などの環境問題の性格の違いと関連する様々なアクターの関係性を踏まえた社会的能力の状態や制度との関係性に着目して研究する。

赤尾 健一
「貿易と環境持続可能性」

このプロジェクトでは、自由貿易と環境保全の関係について考察する。実証面では「定型化された事実」を抽出すること、理論面では動学的貿易理論を応用して新たな知見を得ることを企画している。それをもってアジア地域の持続可能な発展の実現に貢献したい。

「社会統合とネットワーク」グループ

アジアにおける社会的ネットワークの特質と地域統合の可能性の模索

梅森 直之
「アジア地域統合論の歴史的検討」

アジア地域統合は、けっして近年登場した新たしい理念ではなく、むしろ1945年以前の日本においては、経済、思想、国際関係などさまざまな分野における最重要主題のひとつであった。本プロジェクトでは、「アジア主義」や「東亜協同体論」など、戦前日本のアジアに関する主要言説を反省的に分析し、今日におけるアジア地域統合論構築のための歴史的教訓となすことを目的とする。

黒田 一雄
「アジア教育協力フレームワークの構築」

留学生交流の急速な進展、教育機関間の国際的連携の深化、国際教育援助への新興ドナーの参入等を背景に、アジアにおいても教育を地域統合・地域協力に関わる重要な政策課題として考える必要性が認識されてきている。本プロジェクトでは特に国際教育交流と国際教育援助の2つの観点から、アジア統合を考察する。

工藤 宏一郎
「アジア感染症対策ネットワーク」

パンデミック感染症(SARSや新型インフルエンザ等、世界規模で莫大な損害を与える急性感染症)への備えは急務である。特にこれらはアジア地域が発生源であることから、アジア諸国の共同連携行動が必要であり、医療だけではなく危機管理、行政や政治にもつながる問題である。このプロジェクトでは、この重要課題に取り組む国際的な人材の養成、医療体制の構築のために何が必要なのかを明確化していく。

勝間 靖
「アジアの人権ガバナンス」

戦後、国際人権保障の枠組みが国連を中心に発展してきた。その補完として、欧州、米州、アフリカには地域的な人権レジームがある。アジアでもASEANに人権監視機関を創設する動きがあるが、その道のりは容易でない。一方、人身売買という特定分野では、メコン河流域五カ国が、この分野で世界初の地域協定を成立させた。このような背景をふまえ、アジアにおける人権ガバナンスの可能性を模索する。

山岡 道男
「アジア太平洋地域の国際交流」

アジア太平洋地域における国際関係に関する知の制度化を、戦間期にさかのぼり検討し、現在に至るネットワーク形成過程を検証する。取り上げるのは、アジアの地域統合を史上初めて目指して設立された太平洋問題調査会(IPR)である。これは現在の政府間組織APECの設立をPBEC, PAFTAD, PECCなどの民間組織を通じて準備した国際的非政府組織であり、アジア太平洋学の源流とされている。

阿古 智子
「アジアの農村貧困問題」

農業は他産業に比べて付加価値を生み出しにくく、グローバル資本主義の流れが加速する中で、一層不利な状況に置かれている。経済的、文化的に魅力を失った農村からは若い人材が流出し、過疎化と貧困が進行していく。本プロジェクトは、人間の食を守り、農村を活性化するために重要な鍵を握る行政の介入、市場メカニズム、コミュニティガバナンス(社会関係資本)について、アジア的なコンテクストから分析を行う。

客員教授・シニアフェロー

赤羽 恒雄
「東アジア人間安全保障協力」

東アジアにおける人間安全保障問題は、同地域の国家政府・社会に大きな問題を遂げかけている。他方、人間安全保障問題は地域内政府に国際協力を進める機会も提供している。この仮説を検証する為に、このプロジェクトは、東アジアにおける国際移民、人身取引、HIV/AID感染の現状を把握し、これらの問題をめぐる多国間協力のレベルと形態を検討し、域内協力のためにさらに必要な方策と地域統合へのインプリケージョンを提示することを目的としている。